2018年1月2日火曜日

「謹賀新年」の時代 - New Year's Greetings : The Mac OS Classic Era.




謹賀新年

新年の挨拶言葉


携帯電話機のiPhoneなどで知られるアップル社は、もとはコンピュータのMacintosh(マッキントッシュ、略してMacマック)シリーズの製造や販売をする会社である。MacはiPhoneほどの規模も経済効果もないが、1984年の開始以来、現在もアップルの主力事業の1つである。

昔のMacには、正月三が日限定で「謹賀新年」と表示される仕掛け(イースターエッグと呼ばれる)があった。

Macは、初期は旧型OSにあたるMac OS(マックオーエス)が使われていた。一般にClassic Mac OSと呼ばれる代物だが、この時代に、正月三が日限定で、コンピュータの起動時に「謹賀新年」と表示されるイースターエッグ(「隠し技」の意味)があった。

イースターエッグには、他にも「この条件でこの操作をすると、制作者の顔写真が現れる、あるいは隠し画面が現れる」など様々にあった。Classic Macが現役だった1990年代後半当時、私は購入して間もないMacを自宅で操作するため、よりよい知識を探すため、雑誌や書籍から情報を集めていた。イースターエッグは雑誌で知ったが、実際に試して画面表示を確かめた時、それらに人間臭い遊び心が秘められている気がして、無性に嬉しかったのを覚えている。

今は亡きスティーブ・ジョブズがアップルに復帰した頃からイースターエッグはなくなったといわれる。そしてアップルはiPod、iPhone、iPadなど、数々の大ヒット商品を放ち、黄金期を迎えることになる。

21世紀に入った今、OSの呼び名はMac OS(マックオーエス)からOS X(オーエステン)に変わった。名前だけでなく中身もUnixを基盤としたものに一新され、操作性も大きく生まれ変わった。OS XはClassic Macの頃とは異なる貌(かお)として生き続け、10年以上が経過した今も、新時代にふさわしく様々な進化を続けている。

新年を迎える度に、私は「謹賀新年」の言葉をいろんなところに掲げる。

これは、昔を懐かしむわけでもないが、"A Happy New Year."とハッピーに明るく祝うより、「謹んで賀する」という日本独自の表現を好む私個人の性格も、もちろん影響している。


受け継がれていくスピリット?


Windowsを擁するマイクロソフト社には、ビジネスからエンタテインメントまで総べての局面で使用される反面、こういう遊び心は基本的に存在しないと思う。

一方で検索エンジン大手のグーグルは、同社のトップページのロゴマークを、理由はどうあれかなり頻繁に期間限定のロゴに変更する。グーグルは他にも、検索する言葉次第で画面表示や検索結果が変化する遊びや、アンドロイドOS(グーグルが提供するスマートフォンやタブレット向けのOS)にて条件次第で隠し画面が現れる、などの隠し技がある。思わぬところで他社にエスプリのDNAが受け継がれている。

ただ、イースターエッグは、導入するとシステム全体がどうしても不安定になりバグの原因になりやすいとも聞く。普段とは異なるやりかたに変化すると戸惑うユーザーもいるだろう。製品を世に送り出した後のメンテナンスも考えれば、不必要な要素は早い段階で削っておきたい、なので入れたくないという姿勢も責めるべきではない。一方で遊び心を残しておきたいという考えは歓迎したい。

いいか悪いかは別として、会社の姿勢や個性を示すエピソードとして興味深い。


どちらが、正しいのか。


新年を祝う英語表現で、"A Happy New Year."と"Happy New Year."とでは、「頭にAをつけないほうが正しい」とよく聞く。

個人的な昔話になるが、2000年を迎えた新年まもない頃、連れの人間とともに深夜の渋谷駅前でたむろしていた。祝賀ムードいっぱいの高揚した夜の空気に浮かれ、行き交う人たちが他人同士でも愛想よく新年の挨拶をして盛り上がっていた。偶然見かけた光景だが、近くにいた若い男性が、彼のそばに偶然いた外国人の若い男性に向かって"Happy New Year!"と声をかけた。すると外国人が"A! Happy New Year!"と、冒頭の「ア」をやたら強調して返答した。追加の細かい説明などなかったが、明らかに「頭にアをつけるのが、ネイティブの正しい英語なのですよ」と伝えようとしている様子が見て取れた。

Aをつける、つけない、どちらが正しいのかは、私もネイティブではないので、いまだに分からない。グーグルでそれぞれのフレーズを画像検索すると、頭にAをつけないロゴの方が圧倒的に多くヒットする。つけない理由を解説したサイトもたくさん見かける。なのでつけないほうが一般的なのかもしれない。ただ、やはり確信は持てない。

冒頭の「謹賀新年」が現在のMacでも再現できるなら、いっそ正月に限って言語設定を一時的に英語に切り替えて、再起動でもかければ、そこに謹賀新年に代わる英語のメッセージが出れば、少なくともアップル社の見解は明らかになるのになと思う。たとえば英語と米語で微妙に表現が違うのかどうかも、分かるのになとも思う。

もちろん、賀詞を用いるに当たってもっとも大切なのは、新年を祝う素直な心である。表現に多少おかしなところがあっても、相手を不快にさせるものでなければ許容されるべきだろう。そんな中、日本語の「謹賀新年」は正しい表現なだけでなく、相手を選ばずに(目上でもそうでなくても)使える、便利な言い回しのひとつだ。

それもあって、私は今後もきっと新年を迎える度に、「謹賀新年」の言葉をいろんなところに掲げる。


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