2018年4月11日水曜日

すぎやまこういち(作曲家) - "Koichi Sugiyama" as a Composer.




すぎやまこういち

アイドル、ドラクエ、クラシック。何でもござれのマエストロ。


すぎやまこういちは、東京生まれの作曲家である。

本名・椙山浩一(読みは同じ)。1931年、東京府下谷(現在の東京都台東区)に生まれる。東京大学を卒業後、紆余曲折を経て、開局準備中のフジテレビジョンに入局。「ザ・ヒットパレード」の企画に携わる。CMの作曲家としても頭角を現す。やがてフジテレビジョンを退社し、フリーの音楽家になる。1980年代からは人気テレビゲーム「ドラゴンクエスト」シリーズ(いわゆるドラクエ)の音楽を担当し、今に至る。

あまりに経歴が長く、またあまりに多方面で活躍しているので、世代によって話題によって異なる様々な顔を持つ。前述した「ザ・ヒットパレード」の音楽を担当した人、あるいはザ・ピーナッツ(「恋のフーガ」など)、ヴィレッジ・シンガーズ(「亜麻色の髪の乙女」など)、ザ・タイガース(「花の首飾り」など)ら戦後のアイドルやグループサウンズの曲を手がけた人、またあるいはCMの曲をたくさん作った人という回答でも、決して間違いではない。

日本における音楽界の巨匠として、服部一族や小澤一族や久石譲さんらと比べてどう優れているか、どのぐらいの評価を受けているのかなど、そのあたりは全く分からないが、音楽の専門的な機関では学ばず、独学で音を学んだ人としては、有史以来、世界でも五本の指に入る作曲家ではないだろうか。

私にとっては、ドラクエの曲を作った人という印象が第一にくる。

私は1978年生まれの人間だ。テレビゲームのファミリー・コンピュータ(いわゆるファミコン)やスーパー・ファミコン(いわゆるスーファミ)が大ヒットした時代と少年期が重なる。しかし自宅にはゲームボーイとスーファミはあったが、ファミコンはなかった。友達の家に遊びに行った時も誰かのファミコンのプレイを黙って大人しく眺めることはあったが自分から基本的に操作しようとしなかった。そういう自分に酔っている嫌な子供だった。スーファミのドラクエのみ経験したことはあるが、ファミコン黄金期やプレイステーション以降のドラクエをプレイした経験はない。同年代の人と比較したら、私がドラクエに費やした時間は、ないも同然かもしれない。

それでも、彼の名前を目にすると、偉大かつ華麗なる経歴を思わせない、あの人当たりの良さそうな笑顔と、若干のかすれ声で様々な話題を語る姿と、繊細で美しい数々のドラクエの曲をイメージする。


ゲーム音楽が、一流の芸術に変わる瞬間。


ある時、動画投稿サイトのYouTubeでファイナルファンタジー(ドラゴンクエストと人気を二分するゲームソフトシリーズ)の動画を見たら、似たタイプの動画候補で、一般の人によるピアノ弾き語り動画があった。その流れで偶然見つけた曲が「この道わが旅」だった。演奏時間が5分前後だったので、短すぎもせず長過ぎもせずの長さだと思い、試しに開いた。穏やかな導入部から始まり、曲が盛り上がり、最後にはまた静寂に戻る。威厳がありながらもどことなく親しみやすいメロディ、いい曲だなと思った。調べた結果、ファミコン時代のドラクエのBGMのひとつと分かって驚いた。というのも、ピアノ演奏という形式から入ったのもあるが、テレビゲームの音楽だとは夢にも思わず、定番のクラシック曲か何かだと思ったのだ。

「この道わが旅」を契機に、ドラクエ動画の生ピアノ演奏やコンピュータMIDI演奏の数々をYouTubeで探しては鑑賞し、探した。ファミコンのドラクエを知らない私は、それぞれの曲がどういう場面で流れるか全く知らない。それなのに曲が流れ出した瞬間、知らないはずの景色や感情が、非常に鮮明に立ち上がり迫りくるのを何度も感じた。これは古いお城の中、これは洞窟、これは船旅、これは街を闊歩している、哀しみに暮れている、空を飛んでいるような感覚、おそらくこれは大団円、……同じお城や街を描いたものでも、それとなく表情が違ってみえるときもあった。調べると、それは作品のシリーズ毎に、バロック派だのロマン派だのに巧みに切り分けられていることを知った。

ファミコンの頃は、カートリッジの容量やゲーム機の性能の都合により、一部の曲を除いて2和音が限度、しかも音符の数が少なければ少ないほど良いというのが開発元のエニックスからの注文だったらしい。作曲の条件としては携帯電話の多重和音の着メロよりもはるかに厳しい。音楽の素人である私からしても、何度も繰り返し耳にしても飽きない曲を2和音で作るのはさすがに無理だと察しがつく。更にファミコンがあった1980年代なら主要年齢層は子供だ。子供は基本的に飽きっぽい。それでも彼は見事にその条件下で、さまざまな場面を彩る名曲を生み出し、ファミコンという子供向けおもちゃの音源でそれなりに魅了した。一方で東京都交響楽団やNHK交響楽団、あるいはロンドンフィルなどで演奏をすると、まるで真の姿を現したように美しく表現される。子供向けのおもちゃと世界最高峰の本格的なフルオーケストラとでは、同時演奏できる音色の数も、音そのものの質も厚みも雲泥の差のはずだが、極端に違う条件下でもメロディの良さが損なわれないというのは、まさに作曲家の職人芸だと思う。

インターネット上でも、書籍でも、彼を巡る考察や評論は多い。タバコの是非や政治的発言など、音楽とは無関係な分野でも足跡が見つかる。あるいは東大卒の官僚の父親を持ち、彼自身も東大卒であるエリート、みたいな語り口もあるかもしれない。


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