2018年5月16日水曜日

MIND ASSASSIN(マインドアサシン:漫画) - as comic book.




MIND ASSASSIN

悲しみを継ぎし者


MIND ASSASSIN(マインドアサシン)は、かずはじめによる漫画作品。週刊少年ジャンプなどに1994年から1995年まで掲載されていた。単行本で全5巻、集英社文庫では全3巻が出ている。

マインドアサシンとは、第二次世界大戦中にナチスドイツによって生み出された超能力者の通称であり、相手の頭部に触れるだけで記憶と精神を破壊できる能力を持つ。そのまま放置すると死亡するため、その能力を知らない者には「外傷を与えずに相手を殺した」としか見えない。能力を制御するため、普段は両耳にピアスを付けている。また、力を加減すれば記憶や精神の一部だけを破壊することも可能である。破壊された記憶や精神は、何らかの外的要因によって修復することがある。というのがおおまかな設定だ。

主人公は、個人クリニックを運営する医師の奥森かずい。彼の祖父がマインドアサシンのドイツ人であり、彼の父も彼本人もその能力を引き継いでいる。とある縁で知り合った虎弥太(こやた)とふたりで暮らしている。

患者と関わりを持つ彼の日常を中心に、人々の織りなす様々な物語が描かれる。つらくて忘れたいほどの記憶を持つ人間が登場し、彼がそれを消し去る。加害者がいる場合は加害者の元へ向かい、その記憶と精神を破壊することもある。しかし彼はマインドアサシンの能力について快くは思っていない。

少年漫画雑誌、しかも、あの少年ジャンプに掲載されていたとは思えないぐらい、少女漫画のような細い線で、全体的に白い作画でページ全体が描かれる。忘れたいほどのつらい記憶がメインのため、内容はかなり重いものが多いが、その独特の軽く柔らかい絵のタッチが話を救っている。そしてデビュー作とは思えないほど、話の作りがしっかりしていて、絵柄も都会的で、きちんとした「プロの仕事」を感じ、安心して読める。

この作品が連載されていたのは1995年。世でいえば阪神大震災やオウムの一連の事件が発生し、加えて世紀末の終末思想など、世の中がどことなく混沌としていた頃だ。それが作品の世界観や作者の心境にどう影響を与えているのか、あるいは全く関係ないのかは分からないが、読者には少年というよりは青年を選んでいる気がする。もっというと子供向けの漫画ではない印象を受ける。

単発掲載の頃と思われる「#35 MIND ASSASSIN」、雑誌連載第一回目と思われる「悲しみを継ぎし者」、主人公が実の父親との別れを告げる「暗殺者」を含む連作、主人公が自分の能力を初めて肯定する「追憶の“空”の色」、そして主人公が虎弥太と出会うきっかけとなるエピソード「夏のひと」。いずれも、愛するが故の悲劇を必ずなんらかの形で描かれた話で、悲しい結末が待っている。ジャンプの三大原則「友情・努力・勝利」のいずれもない。なので、ジャンプに掲載された漫画でも異色作といえる。

文庫本は単行本と比べても内容の修正等はされていない様子だ。携帯電話もパソコンもない時代が描かれているが、今見ても古びていない。それはやはり、この作品のアイデアやひとつひとつのエピソードが生きている証である。

ウェブ上でこの作品を調べると、タバコのエピソードが光る「幸福者(しあわせもの)」についてファンという意見が多い。しかし私は、同じタバコでも別のエピソード「忘れざる者」のほうが好きだ(笑)。内容自体もマインドアサシンにしては珍しく、それほど重くはない。

人間、生きていれば忘れたい記憶のひとつやふたつは誰にだってある。「過去は消せないとしても、頭の中の想い出だけでも、もしも消せたら」。そんな風に思う時この漫画を読むと、とても心を奪われる。主人公が特殊能力に葛藤するあたりも人間臭くて良い。

相手の記憶を破壊できる能力を、暗殺の道具でなく、つらい記憶を消すために使うというのが主人公の考えだ。その中で唯一、主人公といた記憶を忘れたくないという理由で、つらい記憶を抱えたままの未来を選ぶ話がある。ドイツを舞台にした「異国の雪降る街」である。結末が他のエピソードと違う部分を見せているため、これがマインドアサシンの実質的な最終回かと私は思う。


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